こどもにとってまっとうな医療をする
ヒポクラテスの誓い(ジュネーブ宣言)にはこう記されています。「自身の能力と判断に従って、患者に利すると思う治療法を選択し、害と知る治療法を決して選択しない。生涯を純粋と神聖を貫き、医術を行う。」
ヒポクラテスの誓いとは、医師が守るべき最も基本となる理念で、私はこれをもとにこどもに利すると思う治療法を選択し、害と知る治療法を決して選択しない、を肝に銘じながらこどもにとってまっとうな治療を心がけております。
上乃木に開業して9年目を迎えました。こどもにとってまっとうな治療という考えで、診療を行ってまいりました。こんなことは言うまでもないことと考えておりますので、あえてホームページにも書いておりませんでした。当院にかかりつけてくださっているこどもたちの保護者の方には伝わっているのではないかと思っております。この度医療法人八重垣として医院を続けていくにあたり、一度当院の理念をはっきりと示そうという考えに至り、記載することと致しました。
まっとうな治療とはなんでしょうか。
1、 何事にもこどもを第一に考えること
2、 適切に診断をして、適切なタイミングで治療介入し、適切なタイミングで総合病院に紹介すること
3、 害となることをしないこと
これをまっとうな治療と私は考えております。あたりまえのように聞こえますが、これを実行することは難しく、また、実行し続けるためには、自身の能力と判断力を維持上達させることが非常に重要となります。日進月歩の医療界において、日々論文に目を通し、治療法・検査法・予防接種のアップデートを行い、こどもたちの診療にあたっています。
風邪とひとことに言っても、風邪をひいて何日経過しているか、年齢は生後何か月か、何歳か、保育園には通園しているのか、喘息気味の体質があるのか、鼻炎の体質があるのか、などによって治療薬が異なります。一人一人にあった治療薬の選択を致します。
風邪薬にもいろいろあります。エビデンスがあるもの、ないもの、そもそもに不要なもの、不要なうえに害になるもの。当院で処方する薬は、ほかの医院と比べて少なく感じる人が多いと思います。不要なもの、不要なうえに害になるものを処方しないからです。まっとうな治療という理念を実践しているからです。過去の情報からもっと薬が欲しいと思われる方もおられると思います。が、その中には害になるものや、病状にあっていないものが多く含まれていると感じます。現在日本のドラッグストアで販売されている感冒薬は、アメリカFDAでこどもに投与を勧めていない成分がほぼ100%含まれています。でも日本では販売され、CMもされています。風邪を治す効果はない上に、害となる抗ヒスタミン薬や鎮咳剤が含まれています。
院長は2012年に大学病院で男性医師として初めて育休取得した経歴を持ちます。当時としては非常に勇気のいる判断でした。今思うと、本当にしてよかったと思います。してみないとわからないことだらけでした。本当に視野が広がったと思います。育児の過程で思ったことがいくつもあります。一般診療について強く思ったことの1つは、医師がよかれと思って処方した薬も、多種になるとやはり量が多く、ただの風邪薬でも飲ませるのが大変ということです。漢方薬などなおさらです。離乳食・食事に、おむつ交換に、買い物、掃除・・。すこしでも労力を減らしたいのに、すこしでも眠りたいのに、ほぼ効果のない薬を1日2-3回も飲ませるという親子にとっての苦行。
こういった経験ももとに、適切な診断のもと、どの風邪薬を選択するか判断しております。
昨今、治療や検査方法に対して政府が介入しています。正しい検査治療をすると収入が減る場合が増えました。有名なものは抗菌薬。抗菌薬を処方しない方が診療報酬が増えるのです。見たことありませんか?ほかの病院でこんな記述。「当院では不要な抗菌薬は処方しません」。これ、当たり前のことなのに掲示しないといけないのです。またぜんそく薬。これらは、処方しないほうが病院が儲かる仕組みになってしまっているのです。でも当院では、こどもにとってまっとうな治療を理念としているため、たとえ病院の収入が減ることになってもその子にとって最適な検査・治療薬を選択し、治療のために必要な薬を処方しております。また今後もその方針はなんとしても維持したいと考えております。
必要な検査もこども第一で考えております。炎症反応をみる血液検査も、新生児と同じ痛みの少ない方法で行います。インフルエンザの綿棒検査も、イムノクロマト法を用いた通常の抗原検査よりはるかに感度の高い検査法(その分病院の出費が増えます)で、痛くない採取法で行います(できない場合もあります)。ただ、時に痛い検査もあります。痛くてかわいそうでも、その検査がこどもにとって有用な場合には実施するべきです。
またまっとうな医療として、当院では待合室にもこどもにとって望ましくないものや害となるものは配置しておりません。テレビやタブレット端末などもおいておりませんので安心してご来院ください。おもちゃコーナーには、木のおもちゃ、木の台所セット、絵本を配置し、また、小児科クリニックでは珍しく保育士さんも正規職員さんとして働いていただいております。発達にでこぼこがあるお子さんが待合室でじっとできずに騒ぐこともあるでしょう。そんな子たちでもおだやかに過ごすことができるクリニックを目指しています。
2024年9月1日 くれこどもクリニック 院長 呉彰