インフルエンザワクチン

当院では通常の不活化ワクチンと、経鼻生ワクチン(フルミスト)の2種類がございます。今年から経鼻生ワクチンは日本での発売が開始されたため、輸入ではなく、第一三共(株)発売のものとなりました。

ワクチンの予約は、9月1日(日)9時よりインターネット予約サイトで行います。ご予約・キャンセルはすべてwebでお願い致します。電話では一切受け付けておりませんのでご了承ください。多数の電話対応が困難なためです。申し訳ありませんが、ご理解賜りますようお願い申し上げます。

  注射ワクチン 経鼻ワクチン(フルミスト)
概要 不活化ワクチン 弱毒生ワクチン
製造株 4価
A型株:H1N1(ビクトリア)
    H3N2(カリフォルニア)
B型株:ビクトリア系統(オーストリア)
    山形系統(プーケット)
3価
A型株:H1N1(ノルウェー)
    H3N2(タイ)
B型株:ビクトリア系統(オーストリア)
有効率 30‐70%(おおむね50%) 38.6%(※添付文書より)(注)
効果持続期間 4‐5か月 6か月以上(1シーズン)
接種対象者 生後6か月~ 2歳以上~18歳以下
接種回数 1~2回 1回
価格(税込) 3900円 8800円
デメリット 注射の痛み 接種後に風邪症状がでることがある

二つのワクチンの比較表を作成しました。どちらを接種するか、お悩みの方に参考になればと思います。

(注)フルミストは治験が行われた2016年シーズン(H3N2型流行年)の有効率です。国内ではそれ以外の型への有効率のデータがまだないため、注射ワクチンとの効果の比較は現時点では困難です。注射ワクチンの同年ごろのH3N2型への有効率の報告は、小児では35-38%と低い年でしたので、二重盲検でない研究報告(注射ワクチンのほう)は有効率が高くなっていると思いますので、経鼻ワクチンの方が効果が高いのかなと思います。(2024年9/27追記)

それぞれの詳細・注意点などは以下をご参照ください。また院長もどちらを勧めるか思うところがあります。本ページ最下段も参考になさって下さい。

注射不活化ワクチン

 

 

■値段:1回3900円(税込)

 ※当日接種(予約なしでの来院)の場合には1回4200円(税込)で接種を承ります(残数がなくなり次第当日接種は終了となります)。100人分程度を当日接種で予定しております。

 

■接種回数

 過去に2回以上接種歴があれば、接種回数は1回で大丈夫です。

生後6か月~8歳の人 接種する回数
過去に接種した回数0~1回の人 2回
過去に接種した回数2回以上の人 1回
9歳以上の人 接種する回数
去年までに接種した回数にかかわらず 1回

(9歳以上の人は1回接種です。9歳未満で、過去に2回以上接種したことがある人は、1回の接種で抗体が充分上昇しますので1回接種としてください。過去の接種回数が1回以下の人は抗体価を十分に上昇させるために、2回の接種が必要です。2回接種の際には、4週間以上あけて2回目をお願い致します。)

 当院では、WHOや米国CDCの接種方法をお勧めしています。日本の添付文書上の接種方法とは異なりますが、米国の方法の方が、理にかなった方法と考えております(12歳以下の接種歴のある小児に2回接種を勧めている国は日本ぐらいです)。

 

■対象者
 生後6か月以上~19歳未満の方

 当院初診の方でもOKです。

  こどもさんの1回目の接種予約の時に、ご両親2人分の同時予約ができます。こどもさんの接種時に接種致します。その際の接種料金は、こどもさん3900円(税込)、ご両親は1回3500円(税込)で承ります。

予約方法

上記予約サイトより予約してください。

・インフルエンザワクチンの予約の際には、メールアドレス登録が必須となります。当院からのワクチンに関しての連絡や、予防接種前日の確認メールを送るために必要ですので、よろしくお願いいたします。

・もし同時にご両親も接種を希望される場合には、予約時のワクチンの選択画面で、親1人追加の場合はインフルエンザ(1回目+親1人)を、親2人追加の場合はインフルエンザ(1回目+親2人)を選択してください。子ども1人に対して、1回目の接種時にご両親の2人に接種致します。 2回目接種の時はこどもさんのみへの接種とさせていただきます。よろしくお願いいたします。

・2回の接種をご希望の方は、1回目の接種予約が完了後、再度インフルエンザ(2回目)の予約をお願い致します。

インフルエンザワクチン接種日は・・・

■持ってくるもの

① 母子手帳:大人の方は不要です。
② 予診票:事前に必要な欄をすべて記入して持参してください。
③ 保険証
 特に、母子手帳と予診票をお忘れの場合は、接種できませんのでご注意ください。
④ 接種費用:キャッシュレス決済(各種クレジットカード、PayPay、au Payなど)も利用可能です。

予診票は必ず自宅で記入して持参してください。

 

※予診票の記載ミスにご注意ください。

 よくある記載ミスや記載漏れの例
○鉛筆やフリクション(摩擦で消えるペン)や青のボールペンで書いている → 必ず黒のボールペンで記載してください。
○当日の体調を書いていない
○保護者の方のサインが書いていない

 など

■予定時刻の10分ぐらい前にお越しください。

注意点

■インフルエンザワクチンを生まれて初めて接種する人の中で、食物アレルギーによるアナフィラキシーのため除去食を続けている方は、webで予約せずに、電話で相談してください(0852-61-0905)。過去に接種して大丈夫だった人は通常通りweb予約をしてください(電話相談不要です)。

■予約する際には、2回接種を希望の方は、1回目ご予約後、必ず2回目の接種の予約もして下さい。

■定数に達すると、新たな予約ができなくなります。日時を変更する際には、「予約の変更をする」から変更をお願い致します。もしキャンセルをされますと、予約し直すまでの間に、別の方が予約されることがございます。その際に再予約はできませんのでご注意ください。

■接種日には感染症診療、定期薬の処方、書類の記載などはできません。インフルエンザ予防接種のみを行います。  

 平日午前の接種予定の人は、そのほか診療も可能ですので接種時にご相談ください。

■(ワクチン接種後に院内で) 次回予防接種の予約、予防接種の今後の相談はお断り致します。  

 申し訳ありませんが、後日お電話(0852-61-0905)でご相談ください。

Q&A

Q,過去に2回接種したことがあれば、1回だけでいいということですか?
A,はい、そうです。WHOや米国の基準では、生後6か月~8歳までのお子さんは、過去に4週間以上の間隔をあけて2回接種したことがある人は、翌年からは毎年1回の接種でよいとしております。1回のワクチンで十分抗体が上昇するからです。もちろん2回接種することでもう5%ほどの有効率の上乗せが期待できますが、言い方をかえると5%しか効かないワクチンを接種しますか?病気の重症度とワクチン効果を考えて2回を勧めるのはこどもにとってよい医療とは思いません。もしご不安でしたら、2回接種でご予約いただきましても構いませんが、接種の意義は少ないと思います。ただ、長く効果を持続させたいのであれば1月ごろに2回目接種をされる(5-6月ごろまで効果がもつでしょう)のは一つの考え方だと思います。

Q,去年までは過去に3回以上接種歴があれば1回でよいとなっていたように思うのですが?
A,よく覚えておられますね!他の病院で4週間以上あけずに2回接種してしまう病院があるため、昨年までは「過去に3回接種したことがあれば・・。」としておりました。しかし、当院では2回接種の場合4週間以上あけるように指導しているため、当院かかりつけの人が混乱しないように、分かりやすく今年から正しい記載に致しました。

Q,1回目の時ではなく、こどもの2回目の接種の時に、親も接種してほしいのですが、それはできますか?
A,すいません。1回目の時のみとさせていただいております。予約システムのワクチン枠作成上、2回目にプラス1やプラス2を作成することが難しいので・・。ごめんなさい。

Q,こどもの1回目の接種の時に、20歳の兄も接種してほしいのですが、それはできますか?
A,ごめんなさい、できません。ご両親までとさせていただいております。

Q,生後6カ月の赤ちゃんですが、受けたほうがよいですか?
A,はい、是非受けてください。インフルエンザ脳炎・肺炎のリスク軽減のために是非接種してください。我々小児科医は、インフルエンザ死亡の可能性のある乳児を守ることを最重要と考えております。アメリカCDCでは禁忌を有さない生後6か月以上のすべての小児・成人・高齢者に毎年のインフルエンザワクチン接種を推奨しています。

Q,予約枠がいっぱいで予約がとれないのですが。
A,納入本数に限りがありますので、申し訳ありませんが当院では接種することが出来ません。例年土日の予約枠は1週間前後で予約がいっぱいとなっております。お早目の予約をお願いいたします。
11月12月になると時々キャンセルで枠が空くときもございます。 サイトでご確認ください。
また当日接種(予約なし)での接種も行っております。予約サイトで接種可能かを確認の上、一般診療時間に受診していただければ接種をいたしますので、そちらをご利用いただければと思います。その際の接種料金は4200円(税込)となります。

Q,卵アレルギーがあるのですが・・・
A,ワクチンの製造過程で鶏卵が使用されているので、インフルエンザワクチン液には、ごくごく微量の卵成分が含まれています。ただ極微量ですので、もし少量の卵なら食べることが出来る人や、過去にインフルエンザワクチンを接種したことがあるのでしたら大丈夫です。でも卵でひどいアナフィラキシーを起こしたことがあるようでしたら、初めての接種は予防接種外来の時間で接種しますので電話でご相談ください(0852-61-0905)。予定をたてていきましょう。



経鼻インフルエンザ生ワクチン(フルミスト)

 フルミストは、経鼻タイプのインフルエンザワクチンです。2003年にアメリカで、2011年にヨーロッパでも認可されていましたが、日本では2024年度にいよいよ認可され今年から日本の製薬メーカーが発売を始めました。霧状の生ワクチンを直接鼻の中へ吹き付けるため、痛みがなく、また有効期間が長いため、1シーズン有効です。1シーズンとはインフルエンザの流行季節1回分という意味です。正確な効果持続期間は不明です。弱毒化した生インフルエンザウイルスを使用しているため、接種後数日して軽い風邪症状がでることがあります。

(※針はついておりませんのでご安心ください)

特にお勧めの人

・注射が嫌いな人
・注射のワクチンで腕が結構腫れる人
・受験生・・・予防効果の持続期間が長いため10月に接種しても春まで1シーズン予防効果があります。

詳細

■価格:8800円(税込)

■対象年齢
当院に受診歴のある、2歳以上19歳未満の方。

当院初診の方はお断りしております。接種できない持病の把握が困難なためです。

■接種回数
1回

■接種方法
液体のワクチンで、鼻から霧状に噴霧します。0.1mlずつ両方の鼻孔から投与します。投与時には普通通りに呼吸をしていれば大丈夫です。無理に吸い込む必要もありません。

予約方法

通常のインフルエンザワクチンと同様、チェックオンからのweb予約となります。

もし同時に大人の方も接種を希望される場合には、予約時にワクチン選択画面で、「フルミスト(点鼻ワクチン,1回接種)+親1人注射」か「フルミスト(点鼻ワクチン)+親2人注射」を選択してください。子ども1人に対してご両親2人まで当院で接種可能です。プラスのご両親は、フルミストではなく通常の不活化注射ワクチンです。

 

接種日は・・・

予約の時間の10分ぐらい前に来院してください。

予診票、母子手帳、保険証、接種料金を持参し受診してください。予診票は通常の注射ワクチンとは異なりますので、以下からダウンロードお願いいたします。

もし、接種当日、問診診察の結果からフルミストが接種できないと判断される場合には、通常のインフルエンザワクチン(注射のタイプ)をご検討していただくことがあります。

また、経鼻ワクチンですので、接種日に鼻閉や鼻汁がありますと効果が低下します。接種日に鼻閉鼻汁が多いようなら接種を延期したほうがよいですので、日程の変更をお願いいたします(webで変更可能な日がない場合にはご相談ください)。

接種できない人

 2歳から17歳でアスピリン内服中の人
 喘息のコントロールが悪い人
 免疫抑制状態にある人
 免疫抑制状態の人と接触する可能性のある人
 妊婦さん
 48時間以内に抗インフルエンザ薬を使用した人
 鼻炎・鼻閉のひどい人
 インフルエンザワクチンの重度のアレルギー歴のある人
 鶏卵の強いアレルギーがある人

接種に注意が必要な人

  持病があり、インフルエンザに罹患すると危険な人
  例:肺疾患、心疾患、腎疾患、肝疾患、神経筋疾患、代謝性疾患 など
 ※接種の可否に関しては、お問い合わせください。院長の判断で中止になる場合もあります。

注意点

・経鼻ワクチンですので、接種日に鼻閉や鼻汁がありますと効果が低下します。接種の際に号泣するお子さんも効果が低下します。
接種当日、問診診察の結果から、フルミストが接種できないと判断される場合には、通常のインフルエンザワクチン(注射のタイプ)を検討していただくことがあります。
・本ワクチン接種前後4週間は、他の生ワクチン接種(MRワクチン、水痘ワクチン、おたふくかぜワクチン)はお控えください。
・接種当日の運動はお控えください。

副反応

本ワクチンは生ワクチンですので、接種数日後に風邪症状やのどの痛み、頭痛発熱が出現することがあります。弱毒化したインフルエンザウイルスに軽く感染した状態になります。他者に感染させることはほとんどありませんが、免疫抑制状態の人と接触する可能性のある人は、接種をお控えください。
 よくある副作用
 ・鼻汁、鼻閉:59%
 ・頭痛:11%
 ・発熱:6%

院長の思うところ

 当院では、開業以後昨年までフルミストを輸入し数百人の方に接種してまいりました。海外の報告では注射ワクチンよりやや効果が劣るが、小児には効果が高いといわれてきました。そして、実際にフルミストをした方がインフルエンザに罹患して受診したケースはかなり少なかったです(正確な数字は集計していませんが、8割ぐらいの有効率がありそうという実感です)。今回、発売のための治験で日本の製薬会社が、前向き二重盲検試験という最もエビデンスレベルの高い方法で第Ⅲ相試験を行った結果は、2歳~19歳未満の小児での有効率が38.6%という結果でした。えっ?低いな。注射ワクチンとあんまり変わらないな、っていう感想でした。ただ、調べてみると、この試験が行われた2016/17シーズンはH3N2が流行したシーズンであり、ワクチンが効きにくいタイプのインフルエンザが流行したシーズンでした。インフルエンザは毎年流行する株が違うため、その年の流行株によっては有効率が異なります。注射ワクチンも20%ぐらいしか効かない年もあるし、70%程度効いた年もあります。A香港(H3N2)型に注射ワクチンの効果が低いのは医師にはよく知られています。フルミストもそうであれば、他の型が流行するシーズンではもっと有効率が高くなる可能性があります。

 また、これまでの注射ワクチンで前向き二重盲検試験で行われた報告はないため、注射ワクチンとの効果の比較は現時点では困難です。今後数年間いくつかの型が流行し、日本でのフルミストの使用実績が積み重ねられると、 多くの病院から有効率の論文が発表されるでしょう。もしかして、海外の報告と同様に、小児では効果が高いという報告がでるかもしれませんし、そうでないかもしれません。今後数年間の論文を注視してまいりたいと思います。

 「生ワクチンだから効果が高い」「局所免疫(IgA)を誘導するから効果が高い」と思われている方もおられるかもしれませんが、少なくとも現時点で、日本の小児に対して注射ワクチンより効果が高いという確固たるエビデンスはありません。効果にはさほど差がないというところでしょう。その効果も発症予防効果であり、発症後の脳炎などの重症化率・インフルエンザ死亡率がどうなるかは不明です。また、第Ⅲ相試験は4価のフルミストで行われているのに、今回発売のものは3価であるところも気になります(B型が1価になっているだけで、さほど違いはないのでしょうが・・)。外国では過去の接種歴がない場合フルミストでも2回接種としているのに、接種歴関係なく1回接種となっているという点も不明瞭です。2回接種だと高額すぎて誰もしないから、1回でよしにしたんじゃないかと思ってしまいます。もしフルミストを1回接種にするなら、注射ワクチンも1回を勧めるべきですし、そうでないなら、1か月後に不活化注射ワクチンを追加するか日本では無認可ですがフルミスト2回接種をする必要があるのではと思ったりもします。

 まあ、そういったもやもやを加味しても、痛くないのに半年以上も効くというのは魅力的だと思う今日この頃です。効果の面だけでいうと、経鼻ワクチンがよいのではないでしょうか。

 (2024年8月25日記載)