10歳以上用三種混合ワクチン(Tdap)接種推奨のお知らせ

 当院では11~12歳でDTワクチンの代わりに10歳以上用三種混合ワクチン(Tdap:Boostrix)の接種を推奨しております。以下お読みになり、是非、接種をお願いいたします。

 

今、日本では百日咳菌への抗体保有率が低下し、発症数が増加しています・・

 

 これは2018年の1年間の百日咳の発症報告者数のグラフです。

 緑の棒グラフは百日咳の発症報告数を表していますが百日咳の発症報告数が、6歳以上の年齢で急増しています。これは、0歳で3回、1歳で1回、合計4回接種した4種混合ワクチンで上昇した抗体が、5歳ぐらいで20%台に低下するため、百日咳にかかってしまっているためです。知らないうちに咳が長引く風邪として発症し、周囲にまき散らしている状態となっているのです。これはあくまで報告数なので、実際の発症数はこれよりはるかに多いはずです。

 この年長児の百日咳患者から、0歳児にうつしてしまっている状態が現在の日本の現状です。

 百日咳は赤ちゃんにかかると命に関わる病気ですので、赤ちゃんに感染させないように、社会全体で赤ちゃんを守る必要があります。

 

百日咳含有ワクチンの接種スケジュールのアメリカと日本の違い

 

 アメリカと日本の接種スケジュールの違いです。アメリカを含む諸外国では、4-6歳でDPTワクチン(小児用三種混合ワクチン)を接種し、11-12歳以降はTdapワクチン(10歳以上用三種混合ワクチン)を接種しています。また、妊婦さんや赤ちゃんに接する機会の多い職業の人にもTdap接種が勧められています。当院のスタッフもTdap接種済です。

 2014年のWHOのワクチン会議資料によると、調査国の多くの国で、青年・成人に対する百日咳含有ワクチン接種が行われており、そのすべての国でTdapワクチン(10歳以上用 3種混合ワクチン)が使用されています。

 Tdapワクチンは、日本のDPT(小児用3種混合)ワクチンと同じで、破傷風(T)、ジフテリア(D)、百日咳(P)のワクチンですが、10歳以上の人へのブースター接種用のワクチンで、副反応を減らすために多すぎるジフテリアや百日咳抗原量を減らしてあります(効果は十分ございます)。そのため、Tdapワクチンは、DPTワクチンより副反応が少なく、DTワクチンと同程度の局所反応の報告となっております。

 

当院でのお勧め

 当院では諸外国にならい、年長さんでのDPTワクチン(+ポリオワクチン)、11-12歳でTdapワクチン(DTワクチンの代わりに)を推奨しています。12歳でDTワクチンを接種済みの人の場合は5年ぐらいあけてTdapを接種するとよいでしょう。もちろん、破傷風やジフテリアへのブースター効果もございます。

 (※TdapにはDTワクチンの成分が含まれるため、11-12歳でTdapを接種した場合には、DTワクチンの接種は不要となります。)

 接種にあたっては、日本にはTdapワクチンが導入されていないことから、GSK社製のTdapワクチン(Boostrix®)を輸入し接種しております。そのため、本ワクチンの副反応のため健康被害が生じても、PMDA(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)による金銭的補償救済の対象となりません(副作用に対する治療に対しては、通常通りに保険診療をうけることができます。ご安心ください)。

 接種の価値のあるワクチンと考えられます。是非ご検討ください。

2021年10月14日